気がついたら足を怪我していて、
 気がついたら連絡も取れない状況になった。
 そしてそんな中、自分一人しかいない。

 これは俗にいう迷子だった……。

『ただ暖かさを求める』

「有り得ない、有り得ないジャン……」
 空を見上げ、チータスは呟く。
 最初は自主的に偵察に行くという立派な目的で、基地を出た。それがどう間違ったのか自分の速さに酔いしれ限界までスピードをあげ、駆け抜けたところ
「気がついたらココどこだかわかんないし」
 転げ落ちたせいで足がズキズキと痛む。
 これでは自慢のスピードを出すところか、満足に歩けもしない。
 いざ助けを求めようと通信機を取り出すものの壊れている。
 どこだか解らない場で、助けも呼べないままチータスはただ座り続けるしかなかった。
 夢だと思いたくても、足の痛さが夢でないことを告げる。
「コンボイ……助けてジャン……」
 こんな所でいつまでも一人でいたくなかった。
 どちらかというと一人でいるよりも、複数でワイワイ騒ぐことを好むチータスにとって孤独は大きな敵であった。
 そしていつも傍にいるコンボイがいないというのが寂しさを強調させ、余計チータスの気力は下がりつつあった。
「イヤだぁー! こんなとこにいたくないよー!!」
 大声を出してデストロンに見つかるかもしれないという考えは消えており、がむしゃらにチータスは叫んだ。しかし何度何回叫んでもコンボイどころかデストロンすら現れないので、どうやらこの場はまだ双方の探索が済んでいない場のようであった。
「はぁ、はぁ……もう無理。無理……」
 体力だけでも回復させようと、横にごろんと寝っ転がる。
「これ意外にいいカモ……」
 寝る気はなかったものの、自然と横になると眠りたくなってくるのか。チータスはゆっくり目を閉じると、そのまま眠りに落ちた。


 コンボイ司令官は自分の憧れであった。
 絶対にコンボイの元で働きたいと思っていたチータスは、実際コンボイの元で働くと知ると緊張して夜もまともに寝れなかった。
 まだ遠目でしか見たことの無い憧れの司令官と、共に行動できるだけで鼓動は高鳴り、一体どのような仕事をするのか、どんな風に自分に命令を下すのかと考えるだけであっという間に時間が過ぎる。
 そして初めてコンボイに会った日、何があったのかチータスはあまり覚えていない。
 覚えていることと言えば、緊張していてしどろもどろになって挨拶をしたことと、緊張をほぐすために頭を撫でられたことぐらい。
 思えばあの手はいつでも暖かかったと思う。
 頭を撫でる手が妙に心地よくて、また撫でてくれないものかとひっそり期待をしながら仕事をしていたこともあった。
 願い適うならもう一度、頭を撫でて欲しかった。
 そう思う。


 ふと夢はここで終わり、チータスはゆっくり目を開ける。
 おかしい、何故か知らないが自分の体が揺れている。地震のような感覚ではなく、むしろもっと暖かさを覚える揺れである。
 それがコンボイの背だと気付くのは数秒後。
「まったくこの猫も困ったもんだよ、勝手にいなくなって、勝手に怪我して、コンボイにおぶられてんだからさ」
 楽しく悪態を吐くのは、もはや悪態が特権と化したラットル。
「でもよ、コンボイの慌てぶりは最高だったぜ」
「あ、ダーダもそう思う? もうホント、見物だったからねぇ。チーちゃんが怪我して倒れててコンボイが……」
「チータス! チータス! しっかりしろチータス!! って必死で抱え込んで……」
「もうチーちゃん大喜び」
「こら君達は……あまりコンボイをからかうんじゃないんダナ」
 へいへいとストッパー役のライノックスに気の抜けた返事をして
「だってねぇ」
「だよなぁ」
「おまえたちはぁ……人の目の前でいちいちからかうんじゃない! 何で普段は喧嘩ばっかりなのに、こんな時に限って中がいいんだか」
「ハッ! こんな脳みそ三グラムと仲がいいって? そんなワケないデショ」
「そーだよ。こんなネズミくせぇのと仲がいいなんて、目がおかしいんじゃねぇのか?」
 そういう所が仲がいいんじゃないのかと、コンボイとライノックスは思ったが堂々巡りをしそうだったのでこれ以上深く言うことはやめておく。
「でもチータスが無事見つかってよかったんダナ。本当、いなくなった時は慌てたよ」
「あぁ、すぐ無茶をするからな。……ほっとけないよ」
 背中越しでもコンボイが微かに笑ったことにチータスは気付く。
 本当は反省をすべきなのだが、何故か嬉しい。
 もう少し背中の温もりを感じていたいなどと、そんなことを思いながらチータスは自ら瞳を閉じる。
 大きな揺りかごに身を任せながら、眠りにはいる。
 次、目を開けたらきっとコンボイが目の前にいるだろう。
 そうしたらまずはこう言おうと、チータスは眠りに落ちる直前に決めた。

 ――勝手な行動してごめんなさい。
 でも助けてくれて嬉しかった。――

 飛びつきながらそう言ってしまうか? きっと苦笑いをしながらも許してくれるだろう。
 決めたそれでいこう。絶対飛びついてやるのだと。


後書き
これは竜月さんのリクエスト「迷子なチーちゃんと捜索隊のコンボイ」でした。
とりあえずチーちゃんが、コンボイ好きーでコンボイもおいでおいでと甘やかしているような……。ダイラトはコンボイからかって遊んでるし…なんだこの話!(笑)
こんなんで宜しいですかね?りゅーりゅー?(竜月さん)


戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送