静寂のなか、ふと呟く。
「私の主が目覚めた……」
 するともうひとつ
「でも主は本当に目覚めていないよ、その証に二つで一つの僕たちが二つに精神分裂しているじゃないか」
「確かに今は本当に目覚めていない。でも主は絶対に目覚めるはずだ。我が片割れよ、辛抱してはくれないか?」
「辛抱って僕と君は二つで一つだ。言うなれば僕が君で、君が僕なのだから気にすることはないよ。
あとは任せるよ、僕はまた眠りにおちるから」
 再び静寂が戻った。



『宇宙を駆ける剣』



「ギャラクシーソード?」
「そうだ。この広い宇宙にはそんな名前の剣があるのさ」
 ブラストアームは船内で暇そうにしているキッカーに退屈しのぎにとこの話を始めたのだ。
「どんな剣なんだよ?」
「実際に本物を見たわけじゃないからどこまで本当かは俺も知らねぇ。ただ噂によるとその剣は宇宙最強の剣でそして、使い手を選ぶと言われてるんだよ」
「使い手を……。てか最強の剣なんだろ。仮に見つけられたら誰がその剣を手にすると思う?」
「そりゃ司令官だろう」
 立ち聞きしていたのかロードバスターが口を挟む。
「何だよ、立ち聞きかよ?」
 ニヤリと笑いつつ言うと
「馬鹿いうな! 自分は偶然、耳にしただけだ」
「でもお前ならホットショットって言うと思ったのにな」
「確かにホットショット殿も使い手としてなんの問題もないと思う。でもやっぱり司令官が扱うと思う……」
「まぁ、コンボイなら扱えるだろうな。そんなの手に入ったらこの戦いも少しはマシになるのか?」
 サイバトロンとデストロンの戦いは10年ぶりに再び勃発された。
 10年前のユニクロン大戦のさいに協力して以来、戦うことなどなかった。それがメガトロンことガルバトロンの復活によって話は大きく変わったのだ。
 今ではユニクロン復活を企むデストロンとそれを阻止するサイバトロンの戦いとなっているのだ。


「何ですか、そりゃ?」
 サンドストームはすぐにそう聞き返した。
「ふん、お前は無知だな。まぁギャラクシーソードなど伝説扱いされているからな」
 ガルバトロンは玉座で偉そうに頬杖をつきつつ、話を続ける。
「宇宙最強の剣。是非手にいれておきたいものだな、これで戦いが面白くなるじゃないか」
「しかし、その剣というのは伝説めいた噂しかなく本当にあるかどうか……」
「そうつまらんことを言ってもどうしようもないだろうが。更に面白いことにその剣は使い手を選ぶらしいな。きっとこのワシ以外に誰がいるという!?」
 ガルバトロンは立ち上がるなり、高笑いをした。
 部下たちはこの高笑いがごく当たり前のごとくに別に驚きもせず、ただ黙っていた。
 下手に高笑いの邪魔をすると何をされるかたまったものじゃないのでこのまま黙って過ごすことが一番の策であることを身をもって知っていた。
「……主」
 ふと声が聞こえてナイトスクリームはあたりに気を配らせるが何も感じることはなかった。
 一瞬、空耳かと疑いたくなったが再び呼び声が聞こえて空耳ではないことは確認できた。
 他の者に気づかれないようにそっと外にでて
「一体、誰だ?」
 静かに尋ねてみる。
「私は……探していた……」
「待て!」
 声はもう聞こえてはこなかった。


 もう宇宙では激しい戦いが広げられていた。
 火花が暗がりで何度も光り、地球でいう花火に近いようなものを感じる。
 戦局はサイバトロンが有利であった。
「どういうことだ! 何故こうもおされる!?」
 ガルバトロンは怒りをあらわにしていた。そして同時に部下達の様子を見ていた。
「……」
 今回の穴を見つけると
「ナイトスクリーム。もう忘れたか?」
 戒めのごとく聞く。ナイトスクリームはこれがどれくらい堪えるか十分に知っていた。でも今はそれよりあの時に聞こえた声が気になっていたのだ。
 そして、それをガルバトロンに報告するか否かを悩んでいた。
「ガルバトロン様。実は……」
「待て」
 手で制止、ある一点をじっと見つめ始めた。その目はさきほどの怒りはなく、何か面白いものを見つけたような目である。
 そのガルバトロンの行動にコンボイも気づいたのか射撃を止め、同じ場所を見ている。
「あれは剣か?」
「おお、まさか本当にでたのか!?」
 ブラストアームは乗り出すように剣らしきものを見る。
 剣は不気味なくらいにただ浮かんでいるだけであり、まるで品定めをされているような気になる。
「あれが本当にギャラクシーソードなら使い手を選ぶはずだ……」
 そして遠くでアルファQもこの様子を見ていた。
「一体、あれはなんだー!?」
「ギャラクシーソード」
「あれは使い手を選ぶという伝説の剣」
「じゃあさー、一体誰が選ばれるの?選ばれるのー?」
 顔がグルグルとせわしなく回る。


「勿論、ワシのものだ。さぁ来いギャラクシーソードよ!」
「そうはさせないガルバトロン。貴様には持てる剣ではない」
「ならお前なら持てるというのか?」
「それはわからない。しかしお前が持つことはありえない」
 ギャラクシーソードはゆっくり動き出した。
 ガルバトロンは当然、自分にくると思い込んでいた。そして彼の部下もそう思っていた。
 コンボイは自分にくるか自信はなかったが、ガルバトロンやデストロンにはこないと信じていた。
 キッカーはうっすらともしかしたらどっちにもこないんじゃないかと考えを巡らせていた。
 直感というとあまりたよりにならないがどうもそんな気がしているのだ。
 あの剣は他の者を選ぶのではないかと。
 そのキッカーの読みは正しかった。
 コンボイとガルバトロンの手をギャラクシーソードは拒んだのだ。手を伸ばしても、霧を掴むようにまったく触ることができない。
「まさかここには使える奴はいないのかもな」
「司令官が使えないと他に誰がいるのだ?」
 到底、予測などつかなかった。そして誰一人としてこんなことになるなどと思いもしなかった。
 それは本人にも寝耳に水のようなことであったから。
 ギャラクシーソードはふと止まると刃を翻し、柄を向けた。
「……何故貴様が持つ?」
 ガルバトロンは睨み付ける様に記憶のない自分の副官を見た。
「私にもわかりません、まさか私にくるなんて……」
 でもギャラクシーソードは他の者には一切近づけさせないような独特のオーラを醸し出していた。
 ナイトスクリームは渋々、剣の柄を握ってみた。


「……ということだわかったな?」
 ふとナイトスクリームはガルバトロンの話を聞かず、思いにふけっていたことに気づいた。
 すっかり話は終わっていて、仲間達は散っている。ナイトスクリームはガルバトロンに一礼をすると部屋を出て行った。
 そのナイトスクリームの後姿をガルバトロンはどこか、少し不安げな目で見ていた。
 こんなことを思うなど馬鹿らしいと思うのだが、また同じことを繰り返すのではないかと頭の中をふとかすめたのだ。
「ふん、何を考えてる。まったくもって馬鹿馬鹿しい……」
 吐き散らすように言うと、ガルバトロンは疲れをとるために瞼を閉じた。


「ねぇねぇ、何であの役立たずが剣持ってるのー?」
 オレンジ色のどこか間の抜けた声が響き渡る。
「これは意外な結果だったな。そして意外と思ったのは我々だけではあるまい」
「サイバトロンもデストロンも十分にな。そしてその本人だって驚くだろうよ」
「でもさー何でかな? 剣は何で選んだのー?」
「……剣は見抜いたのかもしれない」
 三つの顔が高速に回り始めたかと思ったら、今度は三つとは明らかに雰囲気の違う顔が現れた。
「あの男の過去とやらを見込んだのかもしれない……」
 どこか意味深な台詞があたりを包んだ。そして、それからアルファQは何も語ろうとはしなかった。


後書き
剣のエピソードがねぇ!伝説の剣のエピソードが微塵のかけらもねぇとは一体どーゆー事だ!
と思ったのがこの話の始まり。公式サイトだったか、何かギャラクシーソードが伝説の剣云々書かれていたような…だから素敵エピソードを期待しているというのになかった(泣)伝説の剣どころかただの剣扱いになっちまうよ!!てことで書いてみる。(捏造)

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