『夢の果てに』



 アルファQがサイバトロンと手を組むことを決めた。彼らにとってユニクロンは自分の星の再生のために利用するのであって別に破壊だとか征服だとかに使うなどまったくないという。
 それにこれは実際に会って感じ取ったことであるがアルファQは基本的に気さくなタイプらしい。
 手を組むという話が出たとき、双方とも嫌な顔をしたが手を取り合わなければならない状況に陥っていると直感で感じ取っていたので、特に大きな争いはなかった。
 しかし、コンボイは頑なにユニクロン再生を拒みロディマスコンボイとは意見が合わないままであった。
 それはコンボイだけではなく他のサイバトロンも同様で、特に10年前のユニクロン大戦に参加していたものは頑固なまでに嫌がった。


 こうして手は取り合っているものの一つにまとまらない彼らに、決断を迫られたのはそれから少ししてからのこと……
 ガルバトロンがついに動き出したのである。アルファQの持つユニクロンの頭を奪い、自分の持つ体とあわせたのである。ガルバトロンはすでにユニクロンを意のままに操る方法も心得ており、手にいれるなりさっそく星の破壊を始めたのである。
 でも、そもそもユニクロン自体も破壊を愛しているので仮にガルバトロンが操れなくても破壊はできたであろう。
「ふはははは、何という力! これがユニクロンか!! いいぞ、これですべてを破壊してやる。」
 ガルバトロンの破壊に対する執着心には、破壊を好きとする彼の部下達に恐怖を与えた。
 あの人は狂っているのか……?
 思わずそう言いたくなるほどガルバトロンは狂っていうかのように破壊を繰り返していた。
「また一つの星が消えたな」
 笑みを浮かべながら星が消えゆくさまを見るガルバトロンに、ぞっとするものを感じざるはおえなかった。
「これが力なのか……」
「そうだ、これがワシの求める力よ。さてコンボイよどうする?あのアルファQと手を組んだところでこのワシを止めることなどできんわ」
 完全に勝利に酔っていた。そして次に考えることはどうやって宿敵と言われたコンボイを破壊することである。
 ナイトスクリームはどこか嫌な予感がした。
 貴方様は過ちを犯している、このままでは……
 と口に言い出しそうになってナイトスクリームは口を押さえた。何故、止めようと思ったのか分からなかった。
 まるでどこかで同じような光景を見たような気がする。
 デジャブに襲われているような感じだった。
 そして、後にガルバトロンを止めなかったことを後悔することになる。


 時が経つにつれガルバトロンはどんどんおかしくなっていき、そして狂い始めた。
 壮大な力を持っているのだからその他には何もいらないと手当たり次第の星潰しだけではなく、自分の部下すら消しにかかってきたのだ。
 ガルバトロンに言わせてみれば、「弱い虫けら」なのである。
「やべぇよ……。ついに本当におかしくなりやがった」
 スノーストームは舌打ちをすると、さっそく脱出の準備に取り掛かった。
 デストロンのなかで唯一、記憶や体を弄くられずにいたスノーストームはガルバトンの変貌ぶりに、このままでは自分の命も危ういと感じ取り、珍しく他の者達を誘い、脱出の準備をしてもう二度と会うまいと
決意していた。
「どうした? もう準備できたのか?」
 サイバトロンと生活した日々を忘れ、野獣と化したアイアンドレッドがナイトスクリームに声をかける。
 ガルバトロンの元を去りたくないと最後までナイトスクリームは言っていたが、今そんなこと言ってる場合かと諭され、渋々了解していた。
「……何故か分からないが頭が痛いのだ」
「そりゃ、お前昔のことを思い出そうとしてるんじゃねぇか?」
「昔? 私の過去のことか。私は一体、何だというのだ? あのユニクロンを見てから何か引っかかるような、とにかく気になる」
 金色の体をした巨大な生命体を見るたびに頭がチリチリするような感覚に襲われる。そして誰かが呼んでいるような気がしてくるのだ。
「おい、早くここから脱出するぞ」


 聞こえるのは少女の声であった。
 きっと名前を呼んでいるのだろうか、最後の……スクリームしか聞こえない。そして少女がどんな少女かも分からずじまいだった。でもその声を聞くたびに心が静まっていくような気がした。
 戦いの旋律のなかで安らぎを与えそうな声に身を委ねていたいが、ふとその声は聞こえなくなり現実に引き戻される。
 私はこの少女を知っている。
 でも名前も顔も浮かんではこない。しかし知っていることは確かなのだ。彼女と過ごした時間はぼんやりと霧がかかっている。
「あぁ、あのまま素直に年を取っているならもう子供ではないのだな」
 何故そんなことを思ったのだろう? 彼女の事など記憶にないはずなのに覚えているような気がする。
「これが私の過去の記憶か……」
 頭に断片的に流れ込んでくるものは間違いなく自分の過去の記憶なのだ。流れ込んでいくたびに頭に痛みを覚えたが、今は痛みなどどうでもよかった。
 この記憶を取り戻したい。
 それしかなかった。そして、取り戻さなければならないという妙な使命感もあった。
 きっと今の自分には必要なことに違いない。
 このまま欠落したままではいけないのだと。
 過去などなくてもいい、未来があって力を示せばいい。
「そんなのは嘘だ、過去がなくては未来などない。私は、同じところに踏みとどまっているだけだ。前に進むためにも私には過去が必要なのだ」
それがこの先、どんな結果を生み出すとしても……


「えっ……」
「どうしたのアレクサ?」
 地球のサイバトロン基地に皆、集まっていた。
 ユニクロンは着実に地球に近づいていて、地球付近の宇宙で大戦が開かれるのは分かりきったことであった。
「何か、声が聞こえたような……」
「気のせいじゃないかな? 僕は全然聞こえなかったよ」
「はっはっは、気のせいだよ。なーにコンボイ達がいるんだ、どうにかなるさ!」
 一体どこからそんな自信が出てくるのか大戦前とは思わせぬ台詞である。
「博士…」
 元々がこんな性格なので呆れる気もしなかった。ジョーンズ博士は彼なりに励ましているのだろう。
「ちょっと、散歩してきますね」
 今は何もすることがないのでアレクサは司令室から離れて潮風にでもあたろうと思っていた。
 というより一人になりたかったのだ。このユニクロン大戦前に色々と思うことがあったからだ。
 一人になって思うことは前のユニクロン大戦のことである。
 以前、ジョーンズ博士にユニクロン大戦のことについての話になったとき「忘れたくても忘れられません」と答えるのが精一杯だった。首にはあの時に貰ったペンダントがぶら下がっている。
 あの時からアレクサはずっとこの火星の石でできたペンダントを肌身離さず付けていた。
 そして決して誰かと付き合おうだとか思ったことはなかった。彼女自身、勉強や仕事が忙しくてそれどころではなかったのが、ある時に告白されたとき
「私は誰とも付き合う気なんてないの」
 と答えた。でも本当は
「他に違う人がいるから」
 そう答えたかった! でもそう答えさせてくれる人は10年前に死んでしまった。もう戻ってこないと知っているのに諦めることができなかった。
「……私、ずっと独身になっちゃうじゃない。責任とってよね」
 分かっているのだ。もう二度と会えないっていうことも、すべて分かっているのだ。
 アレクサはペンダントを握った。
 分かっているのにこのペンダントを後生大事に付けている。なんの意味もないペンダントを。
 でも捨てることはできなかった、以前捨てようと思ったこともあったがいざ捨てようとすると思い出があふれ出て、思いとどまらせることになった。
「勝手にいなくなって……。あれが最後なんて酷いわ」
 もし、あれが最後だと知っていたらきっと意地でも止めただろう。
 いかないでほしい。これが最後なんて嫌だから……と。
「……あれ。何か変」
 さっきまで嫌というほど鼻につく潮風の匂いがまったくしなくなった。
「ここだけ違うような感じ」
 感じたのは違和感と懐かしい感じだった。


 気づいたらここは基地ではなかった。
「……白昼夢? なんか不思議、やっぱり疲れてるのかしら」
 どうせただの夢なのだからとアレクサは夢に付き合うことにした。
 ただ一人佇んでいるのは少々寂しい。どうせ夢ならば誰かが出てきてもいいというのに。
「? なにあの影?」
 薄く白い靄がかかった先に自分の身長をはるかに超えるような巨大が影が佇んでる。
「貴方は……」
「誰だ?」
「夢だっていうのは分かってる。夢なのは……貴方なのね? スタースクリーム」
 影は黙ったままだ。
「私には分かる。間違いないわ」
 普段はそんな証拠もなしに決め付けることはないのだが、これだけは断定できるとアレクサは思った。
「私ね、本当は……」
 願いが叶うものならすがりついてでも泣きたかった。でもきっと近づいても触ることなどできないだろう。それにそんなことをしたら目覚めた時に酷く辛くなることを知っていた。
「気にしないで。私はただ貴方を見れただけでよかったのよ」


 目が覚めたら基地にいた。
 あれは夢だ。そう割り切っていたというのに
「夢じゃなければいいなんてね。さて、そろそろ戻らなきゃね」
 潮風にそっと透明な雫が混ざった。


後書き
ぶっちゃけ日をあけて書くと前の展開忘れます。だんだん錯乱してきます。今プチ錯乱です。
少女マンガ的展開炸裂させたいのです。ベタなくらいに甘く。
でもどうせなら幸せになってほしい。
そしてこの文章打っていた時はスパリンが終ってなかったようです。

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